日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2023年4月17日人を動かす話し方とは?

 

★話にも『目的』がある


日本話し方センターのカリキュラムは、話の仕方が上手くなることだけを目標にはしていません。私たちが行うことには全て『目的』があるはずです。ジョギングは健康を維持増進させるためですし、新聞を読むのは世の中で起きていることなどを知るためです。これらと同様に話にも必ず目的があります。自己紹介は自分の名前と人柄を覚えてもらうことが目的です。また、日常会話は人間関係を良くすることが目的です。
このように、人と話す際の目的は話す場面や相手によって色々とありますが、その一つに『相手に私が言った通りに行動してもらう』ことがあります。これはビジネストークでは特に大事な目的です。そこで、今回は、人を動かす話し方について解説します。


★人を動かすポイントは具体的に話すこと


部下を持つ上司には、部下が言ったとおりに動いてくれない、といった悩みがある人が少なくありません。
「指示したとおりの資料を作ってくれない」
「事務手続きを教えたけれど抜け漏れが多く、言った通りにやってくれない」
「今期の会社の方針を伝えたけれど、全くその通りに行動していない」 など
このような不満を持った上司は、ともすれば、部下に問題があると思いがちです。しかし、コミュニケーションは、原則、発信側にきちんと伝える責任があります。従って、部下が言ったとおりに動いてくれないなら、まず上司の話し方に改善の余地がある、と考えた方がよいでしょう。

上司が部下に指示する際に重要なことは、『具体的に話す』ことです。人間の行動とは極めて具体的なものです。例えば、歩いている時に「曲がれ!」と言われても、どこでどちらに曲がればいいのかわかりません。「次の交差点の手前を左に曲がれ!」などと具体的に言われないと道を曲がることもできません。しかし、私たちはビジネスにおいてこの「曲がれ!」レベルの抽象的な話をしていることがとても多いのです。それは、この状況で「曲がれ!」と言えば次の交差点の手前を左に曲がるだろう、と上司に勝手な思い込みがあるからです。しかし、他の人が上司と同じ判断をすることを安易に期待することはできません。人の判断は人それぞれなのです。なので、いくら言っても他の人は思うように曲がってくれない。言った人は「何故曲がらないんだろう・・・」と思っている。この例え話のようなことが職場で日々繰り広げられているのではないでしょうか。

 

★動作表現で伝える


部下に具体的に指示を伝えることに関してご紹介したい本があります。浅田すぐるさんというコンサルタントの著書「すべての知識を『20字』でまとめる」という本です。とても参考になることが書かれている本で、私は折りに触れて読み直しています。その中に、人に行動してもらいたいなら「動詞表現」ではなく「動作表現」を使うということが書かれています。

浅田さんは、部下が上司の言った通りに行動しない(できない)原因の一つに、上司が『動詞表現』を多用していることを挙げています。
『動詞表現』とは、例えば、
・目的を意識しよう
・組織に浸透させよう
というものです。一般的によく使う表現ですが、この表現では部下はどのように動けばいいのかわかりません。

これに対して『動作表現』は、
・朝出勤したら意識したい目的が書かれた紙を必ず見よう
・組織に浸透させたいメッセージを毎日全員で唱和しよう
というものです。浅田さんは、このような『行動に移せるレベルの表現』を用いるべきだと説いています。

人を動かすにはぜひ具体的に話すこと、できれば『動作表現』で伝えることを意識してください。

 

★日本話し方センターも具体的にアドバイスしています!


ところで、日本話し方センターのベーシックコースでは、講師はこの『動作表現』で受講生の方々にアドバイスをしています。「家でスピーチ練習をしてください」ではなく「家で声に出して30回以上、時間を計ってスピーチ練習をしてください」とお願いしています。また、「もう少し高い声で話した方が声の通りがよくなりますよ」ではなく、「地声が『ド』の音だとすると『ソ』か『ラ』の音で話してください」とアドバイスしています。こうしたことも70年近く続いている日本話し方センターの強みなのです。その効果は多くの受講生が実感されています。ぜひ「受講者の声」をご確認ください!
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